マクベスの悲劇

写真提供:John Matthews

2016年10月13日~16日

東京インターナショナル・プレイヤーズ

モノトーンのシンプルな舞台

img_7887ミニマムでシンプルな舞台と照明で場面の移り変わりを見せる演出は、クラシックでありながらモダンな雰囲気もあり、芸術的な完成度の高さを感じた。演出家のGraig Russell は照明のプロだけあって、光と暗闇を巧みに使った舞台が美しかった。モノトーンを基調とした舞台に、セットは大きなテーブルが3台あるだけ。これを立てたり、動かしたりと配置を工夫することで、場面転換をイマジネーション豊かに演出していた。

濃い感情のぶつかり合う演技

舞台がシンプルな中で、役者たちの熱演が光った。主役のマクベスを演じたIan・F・Martinとマクベス夫人のJulie Sweum は、虚栄心のために殺人を犯し、さらにその罪の意識から狂気じみてゆく様を鬼気迫る演技で魅せた。また、マクダフ役のSal Randazzoは、TIPの看板役者だけあって安定感をある演技が印象的だった。家族を奪われた悲しみがマクベスへの復讐につながっていく過程をよく表現していた。

img_7889また、バンクォー役のAndrew Woolnerは暗殺された恨みが伝わる幽霊の演技が実におどろおどろしく、観客が息を飲むのが伝わって来た。脇を固める役者陣も層が厚く、高貴な雰囲気を漂わせるマルコム王子役Luke D.K. Happle、優しく威厳のあるダンカン王役Tim Jeffaures、真摯にマクベスに仕える召使役Marty Pauley、いかにも悪そうな第一の刺客役Rob Doneganなど、アンサンブルひとりひとりの存在が、芝居に真実味を加えていた。

性別を超えた配役の面白さ

女性が男性の役を演じていることも斬新だった。若くして戦死する小シーワード役にSasha Aronson、コミカルな門番役のGhiselle Camacho、凛々しい騎士ロス役のAlyssa N. Wittrockなど、本来男性が演じていた役を女性が演じていたのだが、物語の進行上、何ら違和感がなく、ひとりの人間としてその役を捉えることが出来た。

三人の魔女とコーポリアル・マイム

img_7888三人の魔女のセリフを演じる役者と、動きを演じる役者が異なっていたのも面白い演出だった。

声の魔女役は、これぞシェイクスピアの醍醐味と思えるリズム感あるセリフ回しが魅力的だった。また、実際に舞台上で動きを演じるのはTania Coke率いるコーポリアル・マイムのマイマー達だ。普通の動作をモダンダンスのような美しい所作で表現する技法は、魔女たちのこの世の物ではない雰囲気を、怪しくアーティスティックに表現していた。

シェイクスピア没後400年に相応しい、クラシカルとモダンが絶妙にミックスした本格作品だ。このような完成度の高い舞台が、英語で、しかも国内で見られる時代が来ていることを非常に嬉しく思う。

『マクベスの悲劇』

【日時】2016年10月13日~16日
【場所】シアターサンモール
東京都新宿区新宿1-19-10 サンモールクレストB1
(最寄駅:東京メトロ丸の内線 新宿御苑前駅) *地図はこちら
【チケット取扱】東京インターナショナルプレイヤーズ www.tokyoplayers.org
【入場料】大人4,500円、学生2,500円

関連リンク

東京インターナショナル・プレイヤーズ:www.tokyoplayers.org/

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